生命保険は、家族に対して収入のある世帯主が死亡した場合の残された家族のために入るものです。しかし、離婚してしまった場合は、生命保険の受取の権利というのはどうなるのでしょうか?離婚の相談件数も増えてきているため、今回は「妻」側の視点で解説をします。
年金は法律で守られているが、保険には法律の規定はない
例えば、結婚してから得た収入は夫が働いた収入だけだとしても、夫婦の収入として2人の財産となります。離婚の際は、この財産を分割することになります。
同じように公的年金は、2007年に制度改正が行われ離婚した場合でも、夫の年金の半分の権利が分かれる妻にもあるようになりました。結婚生活で支払ってきた年金の受取の権利が妻にもあると認められたということなのです。
しかし、生命保険には、年金と同じように結婚生活で保険料を支払ってきたとしても、保険金の受取に関することには法的な決まりはないのです。
一番多いケースでは
- 契約者「夫」
- 被保険者「夫」
- 保険金受取人「妻」
となり、「夫」が死亡した場合に「妻」が保険金を受け取る保険契約を「夫」がしていることになります。
このとき、保険金受取人の「妻」というのは、契約主体ではないため、非常に力の弱い存在になってしまうのです。
例えば、離婚後、契約者の「夫」が保険の受取人を変えたとしても、「妻」に生命会社が知らせる義務もないため、受取人の切り替えは自由にできてしまうのです。また、解約しても解約返戻金は「夫」に支払われることになり、同じように「妻」は保険が解約された事実すら知ることはできないのです。
離婚の際の取決めをして、保険金受取の権利を守る
離婚の際に「慰謝料の一部として保険金を渡す」という約束を取り付けた場合はどうでしょうか。これであれば、一応「妻」の権利が守られたことになりますが、下記のことに注意が必要です。
1.離婚時に契約者を「妻」に変更する
自分が契約主体になれば、保険契約、保険金受取人の変更は「夫」都合ではできなくなります。ただし、契約主体になるということは、それ以降の保険料の支払いは契約者が行う必要がでてきます。
2.離婚時に残りの保険料をすべて支払って契約を完結させてしまう
離婚時に残余期間の総保険料を一括払いしてしまえば、そこで保険契約は完了されます。これを行っておけば、「夫」が契約主体のままで保険料の支払いをせずに契約が失効してしまうことなどを回避できます。
まとめ
離婚後の保障という意味での保険契約の継続は「夫」目線でいえば、『なぜ別れた「妻」に対して保険料を支払い続けて、守ってあげなければならないんだ。』と考えてしまうのが当然のことなのです。そのため、離婚後トラブルになることが多いのも特徴と言えます。
離婚時に生命保険のことに関してもきちんと話し合い、生命保険が必要なければ解約して解約返戻金を慰謝料として半分をもらう、生命保険が必要であれば契約主体を「妻」に変更して受取人の変更ができないようにするなど、対策を取っておくことが重要なのです。